広島文化賞を受賞している「第29回 尾道薪能」が、2021年10月25日(月)に開催されました。
コロナ禍により2020年は中止、2021年も数度の延期を経ての感慨深い開催。
感染予防対策徹底のため、会場は例年の古刹「浄土寺」の阿弥陀堂(重要文化財)から場所を移し、駅前「しまなみ交流館」へ。
観世流 吉田潔司氏・吉田篤史氏・吉田和史氏・吉田学史氏、三世代が織りなす幽玄の美の世界。
四半世紀を超えて続く「尾道薪能」、ご紹介しますね。
第29回 尾道薪能
広島文化賞受賞。
<第27回 番組>
仕舞 屋島
話 能「田村」への誘い
狂言 神鳴
仕舞 浪速、半蔀
能 田村
室町幕府三代将軍足利義満の庇護のもと観阿弥・世阿弥父子によって洗練されてゆき、戦国武将に愛された時代を経て、江戸時代に最盛期を迎えた能。
「しまなみ交流館で能をやるのは困難なのでは?」と心配しましたが、なんのなんの、立派な舞台が造作されていました。
5月8日の日付が入ったチケット。
第29回パンフレット。
入口には「薪」が!(電気?)
薪能の雰囲気が出てますね、実行委員会の皆様ありがとうございます。
ロビーでは能面と衣装の展示が行われていました。
肥後細川家伝来のものですって!
能「葵上」の面。
大学時代「源氏物語」を専攻していたので、「葵上」観てみたいなぁ~。
能・狂言の鑑賞は難しい?
「能を観に行く」と言うと、たいてい「難しいんでしょ?」と聞かれますが、初めての方も楽しめると思いますよ。
なんといってもですね。
『尾道薪能』のパンフレットには、能のあらすじがコミックで描かれているんです。開演前これを読んでおけば、「あぁ、今たぶんこのあたりを演ってるんだな」と理解可能。
主だったセリフもパンフレットに掲載されているので、さらりと目を通しておけば「なんとなく」分かります。それでじゅうぶん。
加えて吉田潔司さんから面白くて分かりやすい「話」(解説)もいただけるので、上演前には鑑賞のポイントや登場人物、時代背景などもよく分かります。
狂言に至っては終始笑いっぱなしですから、老若男女問わず楽しめます。
現代のわたしたちが吉本新喜劇やM1を観る感覚で、昔の人たちは狂言を楽しんでいたんじゃないかしら。
神鳴
東北へ向かう薬師の前へ、突如落ちてきた神鳴(雷)様!
「いし?いしはしゃべらん!」
「あいた!あいた!あいた!あいた!」
絶妙な台詞まわしや間、コミカルでキレのいい所作に、もう笑いっぱなし。
今年は会場にお子さまが少ないのが残念でした、子どもたちにも「伝統芸能への入口」として狂言に触れてほしいなぁ。
田村
大学時代に「能・狂言」の授業を履修していたので、19歳から何度も能鑑賞はしてるのですが、「田村」は初鑑賞。
今回上演された「田村」の前シテ・後シテは、征夷大将軍 坂上田村麿。日本史に興味がない方も、学生時代に名前は聞いたことがありますよね。
わたしの宗教観を変えたマンガ『阿・吽』でも坂上田村麻呂は主要登場人物であり、とても魅力的に描かれていたので、この演目は嬉しかった~!
シテ吉田篤史さんの坂上田村麻呂の、美しく凛々しく荘厳なこと。一挙手一投足見逃したくないと、息をするのも忘れて見惚れてしまいます。
舞、謡(うたい)、横笛「能管」、小鼓、大鼓による伝統美の結晶。
指揮者もいなければベースラインを奏でる楽器(ドラムやベースなど)もないなか、コンマ1秒のズレもなく展開されていく舞台は圧巻のひとこと。
そういえば大学生のとき「どうやって息を合わせてるんですか?」と質問したなぁ。ほんと御見事としかいいようがないんですもの。
開催していただけて本当に良かった、関係者の皆様ありがとうございます。
でもやはり、『尾道薪能』は浄土寺さんで鑑賞したいですね。2022年は浄土寺さんで開催できますように。
尾道薪能ホームページ
https://ermjp.com/noh/index02.htm